低迷期を経て、やっとのことで取り戻した世界一の座。あの灼熱のPK合戦から2年、3年を過ぎた頃から、サッカー王国ブラジルの目標は当然「連覇」へ、しかも前回のような堅守速攻によってではなく、豪華なタレントがひたすらに攻め立てて「美しく勝ち取る連覇」へと、その目的をシフトしていく。年代別の代表に対して過去に例を見ない強化策を取り、チームの指揮官を恐らく世界で最も経験と人望のある老将に託してから、本大会の1年前にようやくその輪郭を現したそのチームは、まさに世界中が溜息をつくしかない正真正銘のドリームチームだった。(以下、ブラジル97の写真参照) 詳細な解説はここでは避けよう。このチームは「ブラジル98」では無いのだから。しかしこのチームの破壊力、スペクタクルはまさに圧巻で、翌年に控えたトリコロールの地での大舞台を、彼らだけの「祭典」にしてしまう可能性は存分に秘めていた。世界中のサッカーファンの噂は「どこが優勝するか?」「誰が得点王になるか?」ではなく、「ブラジルがどのように優勝するか?」、「“ロ・ロコンビ”はどんなスーパーゴールを決めるのか?」に絞られていた。本大会の1年前には既に「ブラジルvsその他」という構図が出来上がっていた。 圧倒的なタレントと完璧な準備。1年前に既に1度完成させた未来予想図は、そこから少しずつ綻び出して、結果的に再びその絵を見ることは出来なかった。完璧に並べられた布陣は、ボランチ、右トップ下、センターバックと、レギュラーメンバーが抜ける度にその代役探しに手間取り、最終的には大会直前に年輩の「ロ」がコーチ陣の信頼を失ってメンバー漏れすることでトドメを刺された。「ロ・ロ」がコンビでは無くなってから、史上空前の「怪物包囲網」が敷かれ始める。その様子はまさに追い込まれていく獣のようだった。 圧倒的な連勝街道を突き進むと思われたチームは、初戦から一貫して低調なパフォーマンスに終始する。北欧勢を中心としたパワープレイに苦しめられ、オレンジ軍団にはとうとう試合の主導権を自ら献上して守り抜く戦術を取らざるを得なかった。 フィジカル型を並べたセンターバックコンビは不安定で、スケールの大きすぎるトップ下は攻撃を渋滞させていく。そんな中でも何とか世界最高の座を賭けたファイナルまで辿り着いたのは、徹底マークの中でも要所で得点を挙げ続けた「怪物」の底知れぬポテンシャルと、深刻な交通渋滞を組織プレイに徹して緩和させた「貴公子」の犠牲心の賜物である。 「世界最高のチームを決める戦い」で印象に残るのは、それに見合ったスーパープレイよりも、おおよそその舞台に相応しくない「事件」の方が多いようだ。今でも忘れることが出来ない「2つのスターティングオーダー」。1枚目にはいなかった「怪物」が、数十分後に配り直された2枚目にはしっかりと名前を連ねていた。 そして試合が始まると、ただ幽霊のようにピッチを彷徨う「怪物」がそこにいた。これまで不完全燃焼なパフォーマンスを繰り返しながらも、何とかファイナルまで勝ち進み、更にその時点で得点王も射程圏に入れていたことで、「ファイナルでは遂に大爆発するのでは」という王国、スポンサー、はたまた世界中からの期待が彼には圧し掛かっていた。その顛末がこの「徘徊」であり、王国にとってはこの試合の全てだった。 新将軍の「正当な」ヘディングが炸裂して、世界にトリコロールの新王者が誕生した後、この試合は多くのマスコミ、ジャーナリストによって解剖されていく。謀略、圧力、思惑・・・様々な噂が巻き起こったけれど、最終的に残った揺ぎ無い真実は「ほんの数十分前まで生死の境を彷徨っていた選手が試合に出た」という驚愕の事実だった。 誰が見ても明らかなように、このチームのピークは1年前だった。南米の大会やプレ大会で素人相手のような大勝を続けていた状態のままに本大会に臨めば、きっと歴史を塗り替える「ドリームチーム」そのものだっただろう。そしてこの屈辱の後、王国は再び泥沼の中から現実的なフットボールで覇権を奪還して、またもや「スペクタクルな連覇」という究極の目標に挑んでいく・・・。 このブラジル98は「優勝候補筆頭は優勝できない」という理不尽なジンクスに敗れた典型的なチームである。そして、歴史は繰り返した。王国の「夢」はまだ叶わない。 ラブフト収録済選手・・・10人。 オンライン追加選手・・・11人。 合計・・・・21人。